青函連絡船音の図書館
青函連絡船の音のライブラリーです。
本音源は、当法人会員の横山光政氏による録音を同氏の好意により提供いただきました。
今は懐かしい当時の貴重な音をお楽しみください。
なお、本著作権は横山光政氏に帰属します。個人使用以外で音を利用されたい方は、当法人にご連絡ください。
タイトル 録音場所 録音日
- 八甲田丸の汽笛
①出港30分前の汽笛:青森2岸、5便(S62.8.13)
②出港の汽笛:青森1岸出港、7便(S62.12.18) - 大雪丸の汽笛
①出港の汽笛:青森1岸、3便(S62.3.29)
②入港、着岸、出港:青森2岸(S62.11.21) - 摩周丸の汽笛
①出港の汽笛:青森2岸出港、21便(S62.2.7)
②出港の汽笛:函館1岸出港、2便(S62.8.17) - 羊蹄丸の汽笛
①出港の汽笛:青森2岸出港、5便(S62.11.21)
②入港の汽笛:青森20便(S62.12.18) - 十和田丸の汽笛
①着岸の汽笛:青森2岸着、24便(S62.2.7)
②岸の汽笛:入港~青森1岸着、8便(S62.11.21) - 空知丸の汽笛
①出港の汽笛:青森3岸出港、51便(S62.8.13)
②出港の汽笛:青森3岸出港、53便(S62.8.13) - 檜山丸の汽笛
①出港の汽笛:青森1岸出港、157便(S62.8.13)
②出港30分前の汽笛:青森1岸、157便(S62.12.18)) - 石狩丸の汽笛
①入港の汽笛:青森、152便(S62.8.13)
②出港30分前の汽笛:青森1岸、155便(S62.8.13) - 函館入港~着岸
タグボート(ひうら丸)に押されて着岸する
1便 摩周丸後方甲板より(S62.12.19) - 青森入港~着岸
タグボート(ふくうら丸)に押されて着岸する
24便 摩周丸後方甲板より(S63.1.1)
- 「長声一発」
出港時のブリッジ、船長の号令
青森出港、3便 羊蹄丸(S63.1.15) - 「レッコアンカー」
入港準備が始まる。徐々に速力を落とし、投錨する(羊蹄丸ブリッジ)(S63.1.15) - モーターサイレンとピストンホーン
モーターサイレン(摩周丸)と ピストンホーン(石狩丸)、函館桟橋見張台より(S62.12.19) - 貨車入替作業(青森)
3岸貨車ヤードにて空知丸の貨車入替(S62.2.7)
機関車に押され5両の控え車(ヒ)がやってくる - 貨車入替作業(函館)
①可動橋付近より(貨車はコキ)(S62.12.19)
②羊蹄丸ポンプ操縦室より(貨車はワム)(S63.1.15) - 船内の貨車に控え車を連結、引き出す
船のレールと陸側の可動橋のレールは「ツメ」で接合されそのツメを車輪が踏んで甲高い音を立てる(S62.8.13) - 列車内の放送案内 (五稜郭 → 函館)
まもなく函館に到着。連絡船への乗換えは、「本州方面」として列車と同等に案内されていた(S62.3.30) - 青森駅の放送案内
青森駅に列車が到着、北海道方面連絡船への乗換え案内がホームに響く(S62.11.21) - 出港(函館、羊蹄丸)、船内案内
新学期間近、別れの声をあびながら桟橋から遠ざかる連絡船(S62.3.30) - 最終便出港(函館、羊蹄丸)
函館側の最終便は22便、羊蹄丸。この日だけの特別な特別な出港の音(S63.3.13)
横山光政の聴きどころ解説
青函連絡船は、1908年(明治41年)から1988年(昭和63年)まで80年間、本州の鉄道と北海道の鉄道を結んでいました。
この間1億6千万人の乗客と2億5千万トンの貨物を運びました。
その青函連絡船の勇姿と、そこでしか出会えない音に憧れ、動画と写真に加え録音で連絡船を最終日まで追いました。
撮りためた音源の中から、これはという音を選んでおります。
1.八甲田丸の汽笛
①出港30分前、作業の目安に鳴らす汽笛は(長)2吹鳴。船体正面方向で聞く汽笛はお腹に響く独特の波動。ちょうど石狩丸が出港し、甲高いエンジン音を響かせ通りすぎていく。
②桟橋待合室で出港案内のアナウンス。続いてブザーの後、出港の汽笛を(長)1吹鳴。船体斜め前方での音。
*八甲田丸のデータ*
全長132.0m 全幅17.9m 総トン数5,383トン 旅客定員1,286名 積載車両48両(ワム) 速力18.2ノット
1964年(昭和39年)就航
現在青森市の青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸として保存展示がされています。
2.大雪丸の汽笛
①船の斜め前方200mほどの岸壁より。青森は岸壁を囲むように建物が建っているため汽笛がよく反響する。
②こちらは20便で青森に入港、着岸、折り返し函館行き9便の出港の汽笛をセットで。出港する岸壁では汽笛を鳴らす直前、バウスラスターの水流が岸壁を蹴る力強い音が聞こえる。
◆出港時の号令とウインチの音・・・・・・貨車作業が終了したら、時間短縮のため必要な係留索だけ残し、他の係留索を船内に取り込む。可動橋が上がり、残している係留索を放つ「Let go shore line」の号令とともに、係留索を一旦緩めるウインチの音、係員が係留索を放つと、ウインチの音は巻上げる連続音を響かせる。
*大雪丸のデータ*
全長132.0m 全幅17.9m 総トン数5,376トン 旅客定員1,286名 積載車両48両(ワム) 速力18.2ノット
1965年(昭和40年)就航
3.摩周丸の汽笛
①出港まであとわずか。係員が連絡を取りながら準備を進める。
②出港時刻になると桟橋では合図のブザーが鳴らされる。青森はブザー音、函館は笛のような独特の音色であった。
このシーンは①②とも汽笛のほぼ横方向での音。
*摩周丸のデータ*
全長132.0m 全幅17.9m 総トン数5,375トン 旅客定員1,286名 積載車両48両(ワム) 速力18.2ノット
1965年(昭和40年)就航
現在函館市青函連絡船記念館摩周丸として保存展示がされています。
4.羊蹄丸の汽笛
①岸壁を波が撫でていく。ゆっくりと船が動き出していく風景。船体の斜め後方200mほどの位置より。
②2岸の桟橋待合室、窓から入港してくる羊蹄丸が見える。こちらに向かって旋回をはじめると、タグボートに「フルで押せ」の汽笛を(短)1吹鳴。次第にタグボートのエンジン音も大きく近づいてくる。
*羊蹄丸のデータ*
全長132.0m 全幅17.9m 総トン数5,376トン 旅客定員1,286名 積載車両48両(ワム) 速力18.2ノット
1965年(昭和40年)就航
5.十和田丸の汽笛
①着岸して可動橋を接合。船の前方で聞く鮮やかな汽笛の音色。
②可動橋付近、カウントダウンしながら船体が迫ってくる。可動橋の油圧モーターが作動する。タグボートに対して通常は、「○○丸レッコー」と帰桟の指示を出すが、愛情をこめて「○○丸ありがとうー」や、「○○丸ごくろうさん」と指示する人もいた。
*十和田丸のデータ*
全長132.0m 全幅17.9m 総トン数5,398トン 旅客定員1,286名 積載車両48両(ワム) 速力18.2ノット
1966年(昭和41年)就航
6.空知丸の汽笛
①貨物船の空知丸は旅客設備のない3岸を使用していた。出港前後の船内のやり取りが良く聞こえる。
②出港5分前にエンジンドライブ。周囲は甲高い独特のエンジン音に包まれる。
①②とも船体後方での音。
*空知丸のデータ*
全長144.6m 全幅18.4m 総トン数4,124トン 旅客定員─ 積載車両55両(ワム) 速力18.2ノット
1976年(昭和51年)就航
7.檜山丸の汽笛
①1岸可動橋付近、出港前に軽快なエンジン音を響かせている。船体斜め後方での音。
②船の斜め前方で聞く汽笛は周囲への反響が加わり、重厚感ある音に仕上がる。
※檜山丸と石狩丸は、6.の空知丸と同じスタイルだったが貨客船に改造されてこのスタイルとなった。
*檜山丸のデータ*
全長144.6m 全幅18.4m 総トン数4,959トン 旅客定員650名 積載車両55両(ワム) 速力18.2ノット
1976年(昭和51年)就航(昭和57年に貨客船に改造)
8.石狩丸の汽笛
①静かな岸壁、目の前100mぐらいのところをゆっくりと通過する。「ボー」 タグボート(ふくうら丸)に「フルで押せ」の汽笛を(短)1吹鳴。並走していたふくうら丸が体制を整え押し始める。
②わずかに波の音が聞こえる岸壁。出港30分前、美しい音色の汽笛が港内に響く。船体斜め前方での音。
*石狩丸のデータ*
全長144.6m 全幅18.4m 総トン数4,966トン 旅客定員650名 積載車両55両(ワム) 速力18.2ノット
1977年(昭和52年)就航(昭和57年に貨客船に改造)
9.函館入港~着岸
1便は青森を0時30分発、函館4時25分着の深夜便。旅行に便利なため利用客が多かった。・・・いま摩周丸の後方甲板。まもなく函館に到着するところ。「フルで押せ」の汽笛にタグボート(ひうら丸)が汽笛で応答する。「ひうら丸スローで押せ」、「ひうら丸ストップ」・・・カウントダウンしながら着岸、可動橋を接合する。
※フル:推力約18トンで押せ ハーフ:同9トンで押せ スロー:同5トンで押せ ストップ:同0トンで待機せよ
10.青森入港~着岸
24便は函館を19時45分、青森23時35分着。接続する列車も少ないため利用客は少なかった。
・・・いま摩周丸の後方甲板。まもなく青森に到着するところ。
タグボート(ふくうら丸)がエンジンを響かせながら押している。静まり返った深夜の港内に汽笛が響く。
11.「長声一発」
羊蹄丸ブリッジ。出港時刻までの静けさ。
タラップが上がり係留索が放たれるとあわただしくなる。
船首から「オモテクリアーサー」の報告。
ブリッジの航海士がすべての状況が整ったことを船長に報告する。
「長声一発」の号令をかける浦池船長。汽笛を鳴らし、ゆっくりと桟橋を離れた。
12.「レッコアンカー」
函館の桟橋が近づいてきた。入港準備が始まる。
タグボートが船尾に平行になって待機している。
「3ノット」・・・「2ノットハーフ」・・・徐々に速力を落としていく。
「スタンバイアンカー」に続き「レッコーアンカー」の号令。
大きな音をたてて錨鎖が海に飛び込んでいく。力強い鉄の音。
13.モーターサイレンとピストンホーン
連絡船は2種類の汽笛が装備されていた。
通常はハーモニックのエアホーン(周波数の異なる2つの和音)を吹鳴し、清澄な音色を楽しませてくれた。
エアホーン以外にモーターサイレンまたはピストンホーンが装備されていて、函館入港、着岸、出港30分前、出港の各シーンで使用されていた。
14.貨車入替作業(青森)
船が到着すると可動橋が接合される。
船尾扉が開き、すぐさま貨車の入れ替え作業が始まる。
可動橋には機関車が入れないので控え車「ヒ」5両を介して船内の貨車に連結する。
船内は4番線まであり、引き出しと積み込みを繰り返す。
船は重さの変化を調整するため、ポンプでタンクの水量を調整してつりあいを維持する。
15.貨車入替作業(函館)
①可動橋付近の貨車作業の音(貨車はコキ)。
②羊蹄丸ポンプ操縦室より(貨車はワム)。
積み込む貨車の先頭が船内の連結器に近づくとカウントダウンが始まる。
函館は5両、4両、3両・・・1両、5m、4m・・・1m。
青森は5車、4車、3車・・・1車、半車。カウントダウンの掛け声が異なった。
16.船内の貨車に控え車を連結、引き出す
これから檜山丸の船内から貨車が引き出されるところ。
船のレールと陸側の可動橋のレールは「ツメ」で接合されている。
控え車が船内の貨車に連結する。
船内からゆっくりと引き出される貨車。
そのとき車輪が「ツメ」を踏んで「キンキン」と甲高い音を立てる。
・・・・車両はマニ2両とコキ3両
17.列車内の放送案内 (五稜郭 → 函館
デッキには白熱灯、車内にたくさん並んだボックス席。
木の床の下からはエンジンの音が車内に響いている。
・・・居心地のよい車両。
まもなく函館に到着する。
車内での連絡船の案内は青森方面ではなく、「本州方面」と呼ばれ、初めて耳にした時は陸続きでない遠いところなんだ というイメージを受けた。
18.青森駅の放送案内
青森駅に列車が到着する。
北海道方面連絡船への乗換え案内がホームに響く。
青森駅に来ると必ず耳にするホームの案内放送。
聞きやすいテンポ、聞き逃してもさらに詳しく復唱される心遣い。
青森駅の丁寧な案内放送も連絡船の音の1コマとして刻まれる。
19.出港(函館、羊蹄丸)、船内案内
今日は3月30日、もうすぐ新学期が始まる移動の季節。
桟橋送迎所には仲間や親せきを見送る人々が連絡船を見つめている。
いよいよ出港時刻。
別れの声をあびながら少しずつ遠ざかる。
それに応えるかのように長い汽笛を鳴らしながら桟橋を離れていった。(24便羊蹄丸)
20.最終便出港(函館、羊蹄丸)
青函航路終航の日、最終便は22便羊蹄丸。
桟橋送迎所では終航式が執り行われた。
出港間近、ブラスバンドによる演奏が終わり、一瞬静寂に包まれる。
タラップが外された。
最後の汽笛。
蛍の光の生演奏、紙テープが舞う音、叫び・・・最終便は夕日に照らされる鏡のような港を出ていった。
※各船舶のデータは、青函船舶鉄道管理局「青函連絡船要目表」、JR北海道函館支店「連絡船メモリアル手帳」に記載の数値を引用・一部修正