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地域鉄道フォーラム2019「鉄道と映画」の開催

一般社団法人交通環境整備ネットワーク主催/国土交通省鉄道局後援
         地域鉄道フォーラム2018 -鉄道と映画-

 このフォーラムは、地域鉄道の現状と課題について広く市民に理解をいただくことを目的として2009年より毎年開催しており、今回は11回目。

期 日:2019年(令和元年)6月8日(土) 13時00分~15時00分
場 所:東武博物館ホール
    東京都墨田区東向島4-28-16 TEL 03-3614-8811(代)
    東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)東向島駅下車0分
参加人員:109名

プログラム      
  1.来賓あいさつ 国土交通省鉄道局鉄道事業課長 石原 大氏
  2.基調講演Ⅰ 「鉄道と映画」 
           元 財団法人運輸政策研究機構会長 羽生次郎氏
    基調講演Ⅱ 「出雲発の鉄道映画に込めたメッセージ」
           映画監督・脚本家  錦織良成氏
  3.トークセッション「鉄道と映画のこれから」
    コーディネーター/社会学者・詩人・國學院大学教授 水無田気流氏
                             羽生次郎 氏
                             錦織良成 氏
         社会学者・社会哲学者・愛知学泉大学講師 田中 人 氏

講演録

講演録の詳細版はこちらから 講演録へ 詳細講演録(pdf,740KB)pdf

1.来賓あいさつ 国土交通省鉄道局 鉄道事業課長 石原大氏

 ご来賓の国土交通省鉄道局鉄道事業課長石原大氏より「鉄道は、単なる移動手段ではなく、それ以上の「存在感」あるいは「役割」というようなものが内在していると感じる。「映画」という切り口から鉄道の持つ魅力とか可能性、日本人の鉄道に対する特別な思い入れとは何であろうか、そのヒントがみつかることを期待。」とごあいさつをいただきました。

2.基調講演Ⅰ「鉄道と映画」 羽生次郎 氏

 映画に造詣の深い羽生次郎氏より「鉄道と映画」と題して基調講演をいただきました。
 講演の中では鉄道がその映画の中で重要な役割を果たして、また鉄道が良く撮れている印象的な映画の数々をご紹介いただきました。
 「鉄道が主人公あるいは従事している人が主人公」となっている映画の代表作として、『鉄路の白薔薇』、『獣人』、『鉄道員』ほかを、「鉄道駅が映画の舞台」となっている映画の代表作として、『逢引き』、『終着駅』、『セントラルステーション』の作品を挙げ、鉄道は映画作家と相性の良い関係にあることを示されました。

 『鉄路の白薔薇』(1923年フランス)の冒頭部分

3.基調講演Ⅱ「出雲発の鉄道映画に込めたメッセージ」錦織良成 氏

 映画監督・脚本家の錦織良成氏より「出雲発の鉄道映画に込めたメッセージ」と題して基調講演をいただきました。
 ドキュメンタリーで難しいこと描いても見てもらえない状況下、エンターテイメントの要素を持って地域のコミュニティと電車のことを描けないかと考えて企画したのが『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった物語』。これまでフイルム映画にこだわり、オリジナルな原作物をつくることを心掛けてきた。これからも自分の人生の中で時間を楽しむ、そのようなメッセージのある映画を紡いでいきたいと述べられました。

4.トークセッション「鉄道と映画のこれから」

 トークセッションでは水無田気流氏がコーディネーターとなって、田中人氏と講演をいただいた羽生次郎氏と錦織良成氏を交えてトークが展開されました。(以下、敬称略)

【 Session 1】 映画の魅力

水無田気流
 好きな映画は、タルコフスキー監督の『ノスタルジア』、小津安二郎監督の『東京物語』、それからベルトルッチ監督『1900年』。1920年代から50年代の映画は鉄道とまさに幸福な結婚をしていた時代と言えると思う。それ以降の時代になってくると、ロードムービーに変わってくる。



羽生次郎 -暗い映画が好き-
 不思議なことに暗い映画には、なかなか良い作品が多い。暗い映画の最たるものがクロード・ランズマン監督の『ショア』。悲惨なインタビューの間に現在の鉄道を走らせるというところで、うまく鉄道を使っていることに感動。




織錦織良成 -映画の魅力はアナログにある-
 映画の魅力は、その内容だけではなく、フイルムの映画にある。フイルムで撮って4K仕上がりしたものと、4Kデジタルカメラで撮ったものとは全く違う。




田中人-不自由さの魅力、貴重な不自由さ-
 映画の魅力は、映画館で二時間くらい、真っ暗の中での「不自由さ」で、その中で様々な人生を体験して、様々な想像力を働かせることが出来るという「貴重な不自由さ」にある。



【 Session 2】鉄道の魅力

羽生次郎 -コミュニティが支えるとそれなりの魅力が出る-
 ローカル線といわれる鉄道は、コミュニティがどう支えていくかということに関わっていくかと思う。またそのコミュニティが支えていくと、それなりの魅力も出てくる。コミュニティがどのようなコンセンサスを持って鉄道を支えていく決意をするのか、というところが重要。


錦織良成 -人生の営みに例えられる鉄道の魅力-
 鉄道は必ず終点の駅があり、それが人生に似ている。鉄道のホームでの風景は正に人生の営みに例えられるのではないか、それも鉄道の魅力ではないかと思う。


田中人-三つの魅力、「近代文明の象徴」「別れ」「絆」-
 映画の中の鉄道の魅力には三つあり、蒸気機関車が出てくるシーンは「近代文明の象徴」であり、駅のシーンは「別れ」を暗示させ、一方、「絆」として未来への繋がりを描く場合がある。


【 Session3】鉄道と映画のこれから

水無田気流
戦前、戦後間もないころの口語自由詩で機関車や汽車がよく出てくる。故郷との決別だったり、古い因習や慣習を断ち切るという決意の表れであったりしたが、戦後の高度成長期以降になるとあまり鉄道は無くなってしまう。構造的に鉄道が社会背景に入り込んできて抒情性を醸し出すという作品は、文芸でも映画でも難しくはなってきているのではないか。鉄道のビジュアルの美しさやそういった魅力についても、映像の世界でどのような位置を占めていくのか、映像資料としての鉄道の可能性についても考えてみたい。



錦織良成 -手間暇をかけた列車を走らせ、付加価値を付ける-
 JRも含めて全国のローカル鉄道線を全部繋いで、手間暇をかけた豪華客船のような感じで列車を走らせるのはいかがでしょう。単なる移動手段ではなく付加価値が付けられたら良いのでは。



羽生次郎 -実体的で力のあるフィルムコミッションを-
 フィルムコミッションを作って、撮影の際の行政的な手続、場所を借りる等の面倒なことはフィルムコミッションが引き受けて、映画作家は自由に撮れるようにする。真に映画の立場で動いてくれるフィルムコミッションが出来ると、錦織監督のような素晴らしい監督が沢山の映画を作ってくれるであろう。



田中人-工夫と費用対効果とコミュニティ鉄道-
 鉄道も映画と同じで、不自由。2時間、3時間と同じ席にいなくてはならない。その中で、人気を集めている鉄道はいろいろな工夫をしてその不自由さの中で楽しめるような魅力、付加価値を付けている。はっきりした効果を、費用対効果に打ち勝つだけの効果を発揮することを考える。その指標の一つに成り得るのはコミュニティで、「コミュニティ鉄道」という概念を打ち出していくことができるかが問われている。



水無田気流 -まとめ-
 鉄道と映画という、ひと時代前にメインストリームの産業だったものが、今後どのように生き残っていけばいいのかという共通の課題を上手く表現されたが故の、『RAILWAYS』の成功であった。  ノスタルジアだけではいけないけれども、また市場主義だけでもいけない、採算を完全に度外視することはやはり産業なので難しい、そういった中で、コミュニティや、あるいは新しいコミュニケーション的な価値、消費価値、メディアの価値の創造が生まれたところに、鉄道と映画のこれからの可能性があるのではないか、と改めて実感。

登壇者のプロフィール

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参加証明書

フォーラム参加者には、記念の特製硬券参加証明書を配布いたしました。

パンフレット

パンフレットはこちらからどうぞ(PDF)pdf
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